東葛経営活性化協会コラム第29回

 今年もあと1か月で前半が終了し、後半目前となってきている。天候も初夏を感じさせる陽気となってきており、月日が経つのが早いとつくづく感じている。

さて、今回コラムはまず筆者の身の周りの事に触れてみようと思う。

先日、コロナ禍で約5年間開催されなかった前職の入社同期会が久々に開催され、メンバーに会えることに加え、通い慣れた駅や経路にも懐かしさを覚えていたので参加してみることにした。メンバーとの会話の中で何か新しい話題やビジネスに繋がるような話でも聞けたらと期待していた。しかしながら、蓋を開けると参加者のほとんどは再雇用者であることがわかり、再雇用している者は職場の所属と立場、加齢による外観上の変化はあるものの、話題については、期待に反して以前とあまり変わっていないと思った。再雇用者が多いことは企業の65才迄の雇用の義務化と65才からの努力義務化による制度変更が影響したものと思われる。

人は職場環境、つまり目の前の職場や仕事が変わらないと単純に年をとっただけでは、物事に対する視野や考え方には影響せず、あまり変わらないと感じさせられた。やはり、自ら新しい事に身を投じ、経験していかないと新しい世界を切り開いていくことは難しいことをまじまじと思い知らされた。

我が身を振り返ってみると、中小事業者の経営支援に身を投じ約4年、多くの事業者の方々と「経営」というテーマを通じ、コミュニケーションできたことは自分自身の成長に繋がっているのではないか、また経営者の方に微力ながら寄り添っていける立場でいれることはとても光栄であることを今更ながら感じることができた。

ところで、今年はオリンピック・イヤーであり、オリンピック開催の年は「米大統領選挙」が行われる。特にパリでのオリンピック開催にはフランスに滞在した経験のある筆者にとってはとても興味深いことである。米大統領選については結果次第によってはかつてのような国内外の株式市場への影響が予想される。

日本経済にとっては、3月には日銀がマイナス金利の解除を決定し、長期金利が1%に上昇するという金融経済の変化が起きてはいるものの、今年も「脱デフレ」が大きなテーマであり、春闘の大幅な賃上げの中小企業への波及が期待される。また、「2024年問題」は、労働市場での人手不足を深刻化させている様相であり、これまで5年間猶予されていた「働き方改革」も4月から厳格な適用が始まり、総労働時間が減るため、多少の時間給アップでは従業員の総所得は減ってしまうことになる。結果、賃上げを後押しする要因になると考えられると思う。

このような状況で、本業の「中小企業を中心とした事業者支援」に関わっていくわけであるが、経営相談窓口で相談件数の多い、国の補助金についても最近は様相が変わってきているのを感じる。

人手不足により、ロボットや機械装置導入への落とし込みを強化すべく、省力化補助金が新設されたり、賃上げ枠を設け、賃上げへの推進サポートを行ったり、第12回再構築事業補助金の再開をはじめ、第16回小規模事業者持続化補助金公募の短期間実施等、一部直近での変更が盛り込まれ、その先の見通しの不透明感があるため、実際のところ、支援する立場からすると問い合わせを受けても、明確に答えることが難しい状況である。

一言で補助金と言っても小規模事業者とそれ以外の規模の中小企業が活用できる補助金が異なる場合があるが、共通して言えることは、ヒト・モノ・カネ・情報(経営資源)のうちのカネとモノ、つまり資金調達し、物品を購入する際、補助金獲得は非常に有効性の高い手段となる。その申請に際しては、経営改善していくための新しい取組み内容、つまり事業計画を事業者と直接、相談・検討しながら立案していくプロセスを共有でき得る。今後も有効な手段として最大限活用していくためにもわかりやすい手続きで申請できるよう対応いただきたいものである。

前段で経営資源に触れたが、特に重要なのが「ヒト」、人材であることに間違いは無い。企業活動にはなくてはならない存在であり、人の力がなければ、業務を遂行することもできない。残念ながら、厳しい労働市場の下、少子高齢化が進行し、労働人口が減少している中で優秀な人材を確保することは優先事項であると言える。優秀な人材とは「企業に利益をもたらす人材」であり、このような人材を採用することはどの企業にとっても重要課題であるが、特に中小企業にとっては至難の業となっている。つまり、決められたことを遂行できる人は数いても、ビジネスを構築できる人、つまり企業基盤の上に立ち、新しいモノやコト、システムを構築できる人を中途で見つけ、採用していくのは非常に難しいと言える。

小規模つまり零細企業レベルのうちは、経営者自身で様々な案件に対応できても、一定の規模、つまり一定の売上や従業員数が超えるレベル、例えば、従業員数であれば、商業・サービス業では5名を超え、製造業では20名を超える場合は、小規模ではなく中小規模企業としての経営が要求される。まだ、何とかなると思っている経営者も商業・サービス業では10名、製造業では30名を超える場合は一人の経営者が効率よく従業員を管理できる範囲を超え、実際のところ、わからない領域や手の届かない領域を有することになり、どうやったらよいかものか顔や態度には出さないものの、内心は悩んでいる経営者は多いことと思われる。

これらの「ヒトの問題」や「経営者のお悩み」に関し、経営に携わる方、ご自身で解決を見いだす方法も当然ながらあるかと思われるが、広い見地から客観的にモノをみることができる、経験豊富な専門家へ相談し、顧問やアドバイザーを依頼してみることも非常に効率的な講じうる対策の一つではないかと考える。

東葛経営活性化協会 代表理事 西村利夫