東葛経営活性化協会コラム第30回

 筆者の勤務する企業の外部環境を調査する過程で、企業の倒産や廃業、解散等について調査することがあったので、去年から最近の傾向についての私見を述べる。尚、件数等の情報は帝国データバンクの公開情報である。

 倒産は、2023年で、8,497件で前年比、33.3%増となった。15年振りに全業種で前年を上回った。原因は、販売不振が7割強あり、それに引きずられるように、売掛金の回収難も増加している。何気に、取引先の与信管理の重要性が増してきている。倒産企業動向で一際目についたのは、業歴30年以上の企業が最多で、2,740件もあることだ。(28.2%増)不況型倒産が多いこの流れ、時代の変化をとらえきれなかったことが伺える。まさに「ローマは一日にして成らず。」である。成功する企業は日々の積み重ねや熟成された企業文化など培ってきたからであろう。

 次に、倒産ではないものの、休廃業・解散も急増している。2023年で59,105件(前年比10%増)2023年の夏以降から急増している。コロナ禍に存在した手厚い支援が縮小された上に、円安による物価高や人件費の高騰、人材不足などにより、資金繰り・損益悪化を引き起こし、今まで先送りしてきた、休廃業を、決断した可能性が高いようだ。こちらでは、直前期の収益が黒字の企業が廃業・解散をしていることが目にひく。割合として去年よりは減少傾向(赤字廃業が増加)であるものの51.9%の企業で直前期が黒字であったようだ。

そのためか、各書籍では、事業承継やM&Aを勧める記事が多いが、実際良い引受先企業が現れるとは限らない。日ごろから磨き上げられた企業か、それなりの将来性の高い企業でないと良い契約は成立しない。そのため日頃から努力してきた企業が事業承継やM&Aにおいても成功し、雇用の継続が可能な状態で引き継がれていくのであろうと思う。

また、M&A仲介事業者の中には、サービス内容と見合わない高額な報酬を要求されたり、買い手企業しか見ていない悪質な業者も多いと聞くので契約を交わす前にしっかりとした確認(専門家を交えるなど)が必要である。休廃業企業が増加している影響として、「士業」の休廃業も増加している事に驚いた。考えてみれば、企業が減って行くので、取引先の減少、競争激化する事は当たり前である。休廃業の増加率では、会計事務所が前年比170%増であった。(81件)

今年も既に、前年を上回るスピードで、倒産件数が増加している。(25ケ月連続で増加)傾向としては、負債額5,000万円未満・原材料費の高騰・10年未満の新興企業である。中小企業がかなり苦戦していることが伺える。

このような状況の中、今年を中堅企業元年と位置づけ国の方針も大きく舵を切ったようだ。今まで支援の蚊帳の外にいた、中小企業の枠に入らない、2,000人以下の企業を中堅企業と定義をし、大企業よりも、国内経済・国内投資に与える影響が大きいこと、他国との比較において大企業へ成長する割合が低いことに鑑み、中堅企業向けの支援強化に乗り出した。今年度実施されている主な施策は以下

①大規模成長支援

・大規模成長投資補助金 補正予算(経済対策)で3年・予算3,000億円、投資下限10億円

・ 地域未来投資促進税の「中堅企業枠」創設(税額控除率の引き上げ) 通常:特別償却40% 又は税額控除4%

②良質な雇用の実現

・賃上げ促進税制に「中堅企業枠」創設 (現行は大企業向けと中小企業向けに二分)

・地域企業経営人材マッチング促進事業

人材プラットフォーム「REVICareer(レ ビキャリ)」を整備し、レビキャリを活用して人材を採用した地域企業の申請により給付金を支給。

③経営資源を集約化し成長する中堅企業の支援

・中堅企業等が事業承継に課題を抱える中小企業を複数回M&A(グループ化)を 行う場合に税制面のインセンティブを付与 

このように国として、支援効果が高いところに注力し出した。中小企業支援パッケージとして、色々な支援策が行われている。

【参考:中堅・中小企業の皆様へ】

もちろん、中小企業の方も活用可能な施策なのでご相談いただければと思う。

 話は変わるが、政府の目指す物価を上回る所得増への取組の一環として実施されている、定額減税について皆さんはどうだろうか。各企業ではこの忙しい時期での実施に困惑している企業も多いと思われる。多くの企業で事務負担が大きく増え、コスト削減に取り組んできた企業では逆にコストアップになっている。実施にあたって、国民が実感できて行政の手間が極力ないように検討したためか、企業の事務負担が大きい。例えば、本来対象でない高額所得者(給与収入2,000万以上は定額減税対象外)も減税(月次減税)の対象にする必要があり減税対象でないと予想される者も減税事務を行わなければならない。また、給与所得以外に、公的年金・事業所得がある場合には、公的年金の方で定額減税が行われ、事業所得の予定納税でも重複して減税が行われる。定額減税の精算方法として、年末調整で調整される者・確定申告が必要な者・定額減税が全額控除できなかった者であれば市町村からの調整給付金が支給される者が存在し、選択肢が多くわかりにくいのが現状である。未確定の令和6年の所得金額を基礎にした制度で各人の動向まで行政が把握できないためにそうなったと思われる。特に高額所得者の方や重複して控除された者は後で減税された金額を返金する必要があり、理解不能な手続きの複雑さである。この時期に令和6年の所得を基準にした減税を行う必要があったのか不明である・・・。

 2024年も半分が過ぎ、残り半年何をするか、何を改めるかなど検討し直すには良い機会であると思う。このような検討に行き詰った方は一度、専門家に今後の進め方を相談してみてはいかがだろうか。

東葛経営活性化協会 会員