東葛経営活性化協会コラム 第19回

転職で感じた組織文化の差異

 筆者はコロナ禍において転職を経験し、社会人20年目にして初めて異なる組織に属することとなった。新卒で入った会社をキャリアアップのために退職し、新たな業務が経験できる会社を新天地として選んだのだが、今回のコラムでは雑感として転職して異なる組織に属すということが個人と組織にどのように影響するのか感じたことを書き留めた。

 同じ組織に約20年所属していると転職先の会社が同じ金融機関だとしてもあらゆるところでギャップを感じることが多くとまどうことが多い。外からきた中途採用だからこそ会社に新しいやり方を提案できる部分もあり中々良い経験ができている今日この頃であるのだが転職するととにかく最初はとまどう。曲がりなりにも大卒で20年働いてきてそれなりに知識や経験があるとしても新しい組織では仕事の進め方などで違いがありすぎてとにかく仕事が進まない。稟議の上げ方、PCシステム、決裁権限から何からまずは一から覚え直さないといけない、非常に煩わしいが組織を変わるとなればやむを得ないことで、まずは、ここに慣れるのに1~2か月はかかった。40歳を超えても時には上司に怒られ、年下一般職から指導を受けるなど四苦八苦しつつも新しい環境に適応するべく日々勉強の毎日である。

新しい職場は中途採用が中心の会社で毎月のようにどこかしらの部署に新入社員(中途採用)が配属になり、どこかしらの部署で退職者がでる。前職が政府系の機関で中途採用はほんの一部だったこともあり、人の入れ替わりが激しいことにもギャップを感じた。

筆者はまず上司を「課長」という役職で呼んだ際に、その上司より「さん付けで呼んでください」と指導を受けたことがカルチャーショックだった。上席を役職で呼ぶのは当然で、「さんづけ」などは上司からすれば馴れ馴れしいとも思われかねないとの認識だったのだが、新しい組織はフラットな関係を重視する文化で社長や役員も全てさんづけで職員とコミュニケーションをとる。前職が大いにトップダウンな会社であったこともあるが、フラットで意見が言い易くボトムアップの会社なことにギャップを感じた。フラットと言えば聞こえは良いのだが、逆に言うと上司が部下に仕事の指導をするケースが少なく部下任せなため転職していまだに仕事の流れがつかみづらいところがありデメリットでもある。自分のやり方で自由に進められるといえば聞こえは良いが、どんなにキャリアがある人でも組織文化に慣れないうちは上司のフォローというものが必要と思うのだがこれも組織文化によって良し悪し分かれるのだろう。実際に決裁に上げる段階で上司からNGを出されるような、事前に相談した際には反論がなかったのに二転三転するというケースが起こり、ボトムアップの組織も楽ではないと感じることも多々ある。決まった仕事が下りてきてする仕事にはある意味安心感があるが、上に上げた段階で内容が二転三転すると担当者は気が休まらないというのが本音である。

前職はトップダウンによる徹底管理を良しとする会社で、現職はボトムアップによる多様性を良しとする会社なのだがどちらも一長一短を感じた

 もともとはトップダウンによる徹底管理の文化に疲弊したので現職の自由な社風にあこがれて転職したのだが、やってみると前職で良い上司に仕えた際の情熱的な指導が懐かしく、あまり上司のフォローがない状況で結果が求められる現職の会社が逆に冷めているようにも感じる。そのギャップが分かるのも転職したおかげなので後悔はないが、もしも前職の会社に定年まで勤めていたら、一つの会社の当たり前を全てだと思い込んだままサラリーマン人生を終えていたことだろう。それが良いと思うか悪いと思うかも価値観なのだが転職して新しい組織に属すことで今まで見えなかったことが見えてよい経験になっている。

新しい職場では店舗が東京にしかなく、地方の営業推進が課題となっている。全国転勤で地方回りの経験もある筆者はそのキャリアを買われて地方の優良な中小企業へクラウドファンデイングサービスを通じて中小企業のPRをしていく仕事に携わっている。前職の価値観からすれば地方回りは決して出世コースではないのだが。そのようなキャリアでも買ってくれる企業に良い条件で採用してもらえることに転職のメリットを感じた。

 転職して属する組織が変わるとそれまでの当たり前がそうでなくなり、新しい環境の中で新たな経験をして自分のキャリアを造っていける。会社が中途採用をする理由として、これまでに組織になかったノウハウを取り入れたいことがあるが、転職者はうまく経験値が活かせれば会社に新しいやり方を提案し貢献できる。事実、転職先の会社では入社後3か月程度の中途採用者がエース級の活躍をしていることも多い。その中途採用者は前職の信用金庫で昇進が難しく、平社員のままでいることに疑問を感じ思い切って転職したと聞くが、まさに天職を得たとのことで実に活き活きと働いている。同じような仕事をするのでも評価が伴うのとそうでないので人の働き方は大きく変わってくる。前職で恵まれなかった彼は転職により待遇も改善しまさに水を得た魚のような働きぶりだ。そのような人が組織を変えていくことが会社の成長にとって必要であり、会社はそのために中途採用をする。昨今では転職があたりまえの時代になり、組織文化に人が集まるのではなく、人が組織文化を創っていくのだと感じた良い会社に人が集まるのではなく、人が自分を活かせる場所があると結果としてそこが良い会社になるのが今の時代かと転職を経験して感じた。

東葛経営活性化協会 会員