東葛経営活性化協会コラム 第18回

 私事ながら、先月、視界の見え方がおかしくなったので、町の眼科医へ行ったところ、手術治療が必要で一刻も早い対応を要すとの診断を受けた。その後、紹介状をもって都内の眼科病院へ向かった。土曜の午後にもかかわらず、即、手術、入院対応していただき、現在のところ順調に回復している。専門家の診断と早期処置の重要性を改めて痛感している。

さて、今回は2023年版中小企業白書と小規模事業白書の概要について触れる機会があったので、その内容について触れてみたいと思う。

まず、全体総論としては、

■中小企業・小規模事業者は足下の新型コロナや物価高騰、深刻な人手不足など、引き続き厳しい状況にあること

■こうした経済環境を乗り越えていくためには中小企業・小規模事業者が価格転嫁に加えて、「国内投資の拡大、イノベーションの加速、賃上げ・所得の向上」の3つの好循環の実現が重要であること

が述べられている。

また、中小企業白書では、「競合他社が提供できない価値の創出により、価格決定力を持ち、持続的に利益を生み出す企業へ成長を遂げることが重要」とし、小規模事業白書では、「小規模事業者は地域経済を下支えする事業者であり、支援組織や自治体のサポートも得ながら、引き続き、地域の持続的発展を担っていただくことが重要」である、と示している。

ともに成長・発展」がキーワードとなっており、規模はともあれ企業の成長戦略を描き実現していくことが、中小企業白書2023年版で提言されている方向性であると言える。

成長戦略と言うと診断士としては検討・実施するための手法として、アンゾフの成長マトリクス、PPM、製品ライフサイクル、M&A、事業構造の再構築等が浮かぶが、これらの手法のうち最適なものを選択し、着手する方も多いのではないかと思う。物価高騰や人手不足といった厳しい経済環境下で、ただでさえ安定維持していくのも大変ではあるが、成長を目指すということは非常に高いハードルと言える。成長していくためには方向性を明確にすることはもとより、生産性向上と具体的なターゲットとなる市場検討をも要求され、価格転嫁実施との同時進行が必須になると思われる。

生産性向上に向けてはGXDXといった構造変化に挑戦し、従来からのコスト削減や経費削減といったスタンスではなく、新たな投資としてDXにチャレンジし、イノベーションを促進し、新たな価値を見出していくというスタンスに自ら変革していかないと実現はおぼつかない。

また、M&Aや事業再構築、つまり、リストラクチャリングやアウトソーシングにて新たな担い手を創出し、新たな需要を求め、新しい市場を開拓実現も必要となっていく。

2021年の経産省の『企業活動基本調査』の中に労働生産性に関する資料があり、「中小企業において、輸出実施企業の労働生産性は、非輸出実施企業に比べ約35%高い」というデータが示されている。海外展開実施による売上高への貢献度は高いことを顕著に示している。

一方、先日、2022年の出生率が発表されたが、過去最低の1.26とのことで前年より更に0.4ポイント減少した。人口減少が著しく、国内の内需縮小に喘ぐよりも、中小企業においても輸出等を通じて積極的に海外需要を取り込んでいく方がチャンスを掴み易いのではないか、また、そうすべき時期が到来しているのではないかと感じている。人手不足で外国人の雇用を考えるのもあるが、この際、前向きに海外展開を考えてみるのも優先度の高い一策ではないかと思う。

「成長・発展」を目指し、企業規模に添ったDXをはじめとした生産性向上の具体的施策導入相談はもとより、来年に迫った国内物流の2024年問題等、ならびに海外への事業展開についても身近な経営コンサルタントと相談しながら政府・関係機関の支援・補助金を最大限活用し、検討・実施していくことが肝要になってきていると思われる。

東葛経営活性化協会 代表理事 西村利夫