東葛経営活性化協会コラム 第15回

[コロナ禍求人から読み取るアフターコロナの世相]

 筆者は金融機関でコロナウイルス感染症緊急融資業務を経験し、コロナ禍の3年間で窮境する中小企業の現状を肌で感じることができた。同時にコロナ影響により売上が上がらず赤字続きの中小企業に対し、融資による支援に限界を感じたことがきっかけで転職活動を経験した。

 コロナ禍で一時は低迷していた求人数もコロナが落ち着くにつれて徐々に増加している。そして、企業が募集する求人内容の詳細を知ることで、企業が目指しているであろう経営ビジョンを読み取ることができた。今回コラムでは転職活動において目にした数多くの求人案件や面談した方々の生の情報から、アフターコロナに向けて企業の目指しているであろう姿について感じたことを述べたい。

 まず目についたのはM&A人材募集の求人の多さである。筆者は40歳を越えており世間的には転職が難しくなるであろう時期に差し掛かっているがそれでも毎日のように何かしらのM&A事業者からの求人メールが届いた。メールボックスに未読が溢れるほどの活況さであり、1日に10件以上はM&A経験者を求める内容の求人が届いていたかと思う。コロナで廃業する企業が多くなる中で、存続する企業は同業他社の吸収合併や事業買取によるシェア拡大に走り、それに便乗する業者が多かったことがうかがえる。筆者も金融機関において合併に伴う業務に携わったことがあるが体感的な相談件数はコロナ禍で確実に増えている。

 次に異業種人材の募集がコロナ前の求人と比較して増えているようだ。これもコロナで既存事業の売上が上がらなくなる中で経営多角化などに乗り出した企業が多かったことが要因と推測される。転職の際には人材紹介会社のコンサルタントへ相談するのが一般的であるが、筆者も30人以上のコンサルタントと面談し様々なアドバイスを受けた。これまで経験してきたスキルを他業界で活かすといった転職は一つのトレンドとなっているらしく、異業種からの人材募集が増加していることは、企業がコロナで窮境する既存事業からの脱却を図り、新規事業の事業領域の専門人材を求めた結果であろう。例えば自動車メーカーや建設機器メーカーがコロナで停滞する新車・中古車販売の売上を補うためにリース事業を開始し、金融人材を募集するようなケースや、コロナで出社が難しくなり、リモートワークが増加する中でDX推進などの流行の影響も受けて社内推進などシステム構築のためにSEを募集するようなケースである。その他、コロナで売上が低迷して赤字転落、債務超過に陥るなど窮境する会社が増加したことで事業再生コンサル会社が多忙となりコンサル業界の求人も活況さがうかがえた。

 筆者もコンサル業界の面接を受け、某コンサル会社の社長面接も経験したが昨今のダイバーシティの影響かコンサルティング会社も多様な人材を求めているようで内定こそ獲得はできなかったがコンサル未経験者が40歳を越えて役員面接にまで進めるあたりコロナ禍の今、コンサルティング業界も人手不足で入社のハードルは下がっているのではないか。特にコンサルティング会社社長との面談では今後の業界の展望や求める人材などについて多角的な生の意見に触れることができ、この場で詳細に書ききれるものではなく割愛するがアフターコロナに向けて多忙になるコンサルティング業界の雰囲気を感じ取ることができた。

 ~コロナ禍の求人に見えたことは~

① M&A求人の多さよりあらゆるり業界において再編が進んでいること

② 異業種人材募集が目立つことより企業がコロナ禍においてより新たな事業領域へ転換を図っていること

③ コンサルティング会社の求人状況より、コロナで疲弊した企業の事業再生はテーマとなっていること

  あくまで個人が経験したことをもとに記載したコラムであり統計やデータなどの活用は行っていないが面接官や転職コンサルタントとの面談により得た生の情報をもとに執筆をしている。コロナで困窮した企業は事業再生を図り、新たなビジネスモデルを求めて暗中模索をしているといった世相であろうか。

アフターコロナに向けて多くの企業は経営転換を図っている様子がうかがえた。

  最後に余談にはなるが筆者は金融機関の融資担当者からベンチャー企業向けクラウドファンディング相談担当者へ転職を果たした。新規事業にチャレンジする会社をクラウドファンディングで支援していきたいと考えている。コロナで疲弊した企業が新しいビジネスモデルを求めている中で微力ながらお力添えができれば幸いである。

東葛経営活性化協会 会員