東葛経営活性化協会コラム 第16回
最近の賃上げがブームのようにニュースで流れる。日本商工会議所は3月末に「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」の調査結果を発表した。調査では中小企業の6割近くが、2023年度に賃上げを予定している。
従業員のモチベーション向上のため、物価高騰に対抗するためが主な理由として挙げられているが、業績向上ための賃上げではなく、優良な人材の確保のための防衛的な賃上げであるとの回答が賃上げを予定している企業の6割強もあった。(2022年度からは減少している)しかし、3割強が現時点では調査時点では未定であり賃上げをしたくても出来ない企業も多く存在する。賃上げを予定しない企業の主な理由は、自社の業績低迷、手元の資金不足が6割を超える。世間では、中小企業でも6割を超える企業が賃上げを予定していると良い方向のみ強調するが、私どもはこのような、賃上げをしたくても出来ない企業様をご支援していきたいと思う。
日本の企業では、低価格化競争のために、生産性の向上を行い、コストカットにより発生した利益を製品・サービスの低価格化につぎ込んできた。そのため利益も向上せず、設備投資もできず、付加価値も上がらず悪循環を生んでいる。そこに、今回の物価上昇が追い打ちをかけてきた。経営状況が厳しい企業においては賃上げよりも前に、価格交渉により売買価格を上げて頂かないと企業の存続も危うい企業も多いかと思う。賃上げも重要な戦略の一つであるが、世間の風潮に流されず自社の状況を踏まえて、目的を明確にしてから実施することが重要である。もちろん、賃上げを実施する企業は財務的に問題ない企業であることが必要なのでこの説明は割愛する。
まずは、中小企業で賃上げを行う上で確認すべき事項として、賃金制度(小規模な企業であれば個別の労働契約)がどのようになっているか。なぜならば、賃金を上げる手法によっては、一度上げた賃金を下げることが出来ずに、経営難に陥る可能性があるからである。今回の日本商工会議所の「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」でもあるように、賃金を上げる内容は大きく分けて3つある。
「定期昇給」・「ベースアップ」・「賞与、一時金」であり、経営的に柔軟に対応が可能なものは、「賞与・一時金」である。しかし、従業員のモチベーション向上など生産性や付加価値の向上を考えるなら、「定期昇給」や「ベースアップ」を選んだ方が、効果が大きい。
「定期昇給」や「ベースアップ」を行うのであれば、事前に自社の賃金制度が状況に応じて対応可能な内容なのか、役割や仕事内容に対して評価がされて賃金の上下が可能な内容なのかに注意する必要がある。
日本では一般的に年功序列的な賃金制度であることが多く、一度上げた賃金を下げることが難しい企業も多い。今騒がれている賃上げ基調は、今後も続くとみられており、業績アップが約束されているわけでもなく事前に規程類を確認しておく必要がある。また、「定期昇給」や「ベースアップ」は固定給のアップに繋がるので、2023年4月から中小企業の60時間超を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられているので注意が必要である。今までは割増率「25%」であったが、「50%」に引き上げられている。この改正により多くの中小企業では、コストアップや労働時間の削減に取り組んでいるかと思う。別な方法として、事前に労働協約を締結することによって、増加する「25%」分を代替休暇という形で付与することも可能である。
次に、賃上げの目的が雇用の維持や採用広告で競合他社と比較される状況があり、賃金の水準を合わせたいなどであれば、「賞与、一時金」を支給することも効果があり、各企業の経営状態に合わせて実行できることがメリットである。
賃上げを実施するにあたっては、コストではなく投資と捉え、生産性の向上や付加価値の向上に取り組むことが必要であり、自分自身で考えて行動する従業員一人一人が育ち、さらには個人単位から組織となって(属人的なレベルから組織的な仕組みになる)、その結果、永続的な企業価値が発生し今後も存続できる企業として残っていくのではないだろうか。
国も、そういった生産性・付加価値の向上を行う企業で、賃上げを行う企業に対しては、補助金や助成金を割増して出しており絶好の機会だと思う。補助金・助成金を活用し自社のレベルアップや事業環境の改善をお考えの経営者様は一度当協会までご連絡いただけると幸いである。
また、実際の賃上げのみでも優遇される「賃上げ促進税制」がある。筆者の勤務する会社では適用できなかったが、税法上の中小企業(資本金1億円以下)は優遇されていて、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度であり、適用にあたっては、顧問税理士に確認する必要がある。
先にも述べたように、賃上げ基調は当分続くと思われる。単に賃上げの事実のみを意識するのではなく、従業員への賃金を投資と捉えどれだけ活用できるか(国の制度を含め)によって、今後の企業の行く末を占う良いチャンスではないであろうか。
東葛経営活性化協会 会員


