東葛経営活性化協会コラム 第12回
時がたつのも早いもので2022年1月に第一回コラムを執筆し、6月に再度執筆してからあっという間に2022年も終わろうとしている。振り返ると、本年はコロナ禍からの経済活動回復や雇用環境の変化、影を落とすウクライナ問題、その結果による物品需給バランス変化、世界的インフレの進行やその対策における各国中央銀行のスタンスやスピード感の相違による急激で異常な為替変動等、企業活動のみならず我々の毎日の生活においても非常に大きな影響が出た特別な年度であった。年末年始にかけてはインフレピークや各国金利政策に変化の兆しが見られ、中国のコロナ政策変化も相まって、タイムラグは色々とあろうが、為替や経済状況、企業活動や個人の生活に2023年は新しい傾向が出始めると思われる。今回は2023年1月コラムとして、この年末年始の日米相違について紹介したい。
北米は10月末のハロウィーンからホリデーシーズンが始まり、11月第4木曜日の感謝祭を挟んで一気にクリスマスシーズンに突入する。従ってホリデーシーズンは10月中旬から新年までの2か月半である。クリスマスと言えば、日本ではキリスト教会を除いて、宗教色のない日本独特の特殊な単独イベント日でありそれに伴う経済活動が中心だが、北米では12月初旬から宗教、経済、イベント各活動が関連した非常に重要な一大シーズンである。又ご存じの様にクリスマスはキリストの生誕記念日だが、ユダヤ教にとっても同時期(12/18-26)に起源と性格の全く異なる光の祭典(ハヌカ)を祝うシーズンである。従ってシーズン挨拶には宗教色を抑えた“Happy Holidays”等の表現が一般的である。ちなみに首都ワシントンのホワイトハウス前の公園には自生の大型クリスマスツリーと、ハヌカの燭台である大型メノラーが飾られている。
一方アメリカ発祥の地であるバージニア州のわが街はこんな感じである。
いたるところで電飾が輝き経済活動が盛大な中で、街角では聖歌隊が賛美歌やクリスマスソングを歌い、教会のオルガンが響き、チャリティーの鈴が鳴り、生木のツリーが清涼感のあるアロマを放ち、松明や暖炉がパチパチと燃えてキンとした冷気を光と薫香で包み、蝋燭が静かに揺れている。
日米の相違点は多岐にわたるが経済活動の具体例をいくつか紹介したい。
1) ツリー:感謝祭後に各家庭がホームセンターに複数回入荷する植林生木(~2m)を購入使用後、地方自治体が回収して堆肥化している。用地活用、自然保護、SDGが進んでいる。但し今年は価格が5-10%高騰しておりインフレを実感せざるを負えない。
2) ギフト:ギフト交換は一大イベントだが、ギフトに白紙レシートが付いていれば購入店でほぼ理由を問わず返品・交換等が可能である。北米では基本的に全ての購入品は使用後でも概ね返品返金可能であり、システムが合理的で購買活動向上に貢献している。
また、シーズンの売れ残りや返品商品は12/26以降に大きな割引セールが盛大に実施される。
これも合理的かつ経済刺激策である。
3)施し連鎖の文化:シーズンになると、特にレストランやレジで自分の支払い時に、見知らぬの人(例:居合わせた高齢者カップル)の分も含めて清算し無言で立ち去る文化がある。施された人達は自分の精算時に驚くが、感謝をして別の機会に同様に見知らぬ人に施していく。聖書の逸話の具現化の連鎖である。
4)施しのシステム:生活困窮者や低所得者層人達は、ギフト交換用の商品を地元慈善団事前登録し、この団体が内容と数量を把握した上で、各教会やライオンズクラブ等のメンバー、さらに地元メディアの広報活動経由で一般人にも幅広く寄付を募り、集まった商品、箱、包装材を必要な人たちに提供するシステムが構築、運営されている。
5)季節もの:ハロウィーンはなんでもパンプキン、感謝祭はなんでも七面鳥,クランベリーで単純に表現できるが、クリスマスは日本のチキン・クリスマスケーキ、では全くなく、12月を通して欧州各国の焼き菓子・ケーキ・チョコレート類が並び、エッグノッグ、ホットワインが登場、当日はオーブンローストであろうか。欧州キリスト教移民文化が中心だが、中南米も含め、宗教文化を通した多様性が示されている。
6)ビジネスアワー:クリスマスは家族や親族が集って祝う休日、聖日であるため、礼拝や特別礼拝の時間が配慮され、12/24はレストラン等を除いて午後の早い時間帯に店舗や公共サービスはクローズとなる。また12/25当日はレストランも含めて、店舗はほとんどクローズとなり、街全体は静寂に包まれる。その反動で12/26からアフタークリスマスセールが実施される為、午前中から商業施設はかなりの活況を取り戻す。インフレとはいえ実質賃金が上昇し、雇用がコロナ以前よりもまして自由化している昨今、消費者購買力は日本のそれとは大きく異なっている。
7)クリスマス以降:アフタークリスマスセール、その後12/31、1/1の山を迎えてシーズン終了となり1/2からはドライに通常の生活サイクルに復帰する。北米では正月休暇は一日のみである。
12/31は日本では大晦日、2022年最終日であり波乱の年をしみじみと振り返るところだが、北米では“First Night“と呼び、2023年が始まる最初の夜という位置付けで、年明けの秒読みカウントダウンを盛大に行う。そして来る年に期待を込めて大いに祝って盛り上がる。
アメリカ合衆国の年明けはアメリカ本土東部時間から始まり、NYCタイムズスクエアのカウントダウンと花火が全米に中継される時、西海岸はまだ2022年12/31の21時であり、ハワイは19時である。
ここまで思い着くままに紹介してきたが、特にこの時期は宗教に基づく懐の深さや合理的発想、能動的活動、広大な国土と多様性をしみじみとかみしめることになる。何かヒントがあっただろうか?
東葛経営活性化協会 顧問 安田 智