東葛経営活性化協会コラム 第2回

 企業内のグローバルロジスティクス部門にて、数々のイノベーティブな物流プロジェクトを当協会の代表とともに企画してきたメンバーとして、今回、執筆することとした。少し長めのコラムとなるが、お付き合いいただきたいと思う。

テーマは、現在話題となっている『物流混乱』について執筆をとの依頼のため、ここ2、3年の状況を記していきたいと思う。

 コロナ禍の下、世界的に経済が低迷、感染者の増加やロックダウンによって生産や消費が落ち込み、失業者が増加。港湾労働者や貨物輸送の運転手の不足にも拍車がかかり、運賃等の高騰を招いている。

特に米国では影響が顕著で米国西岸沖には入港許可を待つコンテナ船が溢れる。コンテナの荷役や搬出・配送が滞り、コンテナが実入りで滞留し空コンテナは不足。生産基地の中国や東南アジアに戻る船も回送する空コンテナも遅延する悪循環が深刻になっている。

それらの影響はアジア生産の電子機器だけでなく、半導体をはじめ部品や原材料にもおよび、消費回復や需要の増大に応じた計画生産や増産が困難になっている。家電量販店では機器によって在庫不足や納期の遅れ、半導体不足により生産出荷待ちの表示も見られる。

そのような中、日々変動する状況に応じた対処を迫られる。変動要素は海上輸送では、確保可能な空コンテナ数、航路・本船の日程と寄港地(地方港の抜港もあり)、搭載可能なコンテナ数と運賃、そして自社の在庫、出荷先の在庫、消費地の需要、などが考えられる。

中でも出荷先の在庫と需要のバランスによって投じる特効薬が航空輸送であり、貨物専用機では大量輸送も見込めるが、需要の不均衡や燃料費により運賃の高騰を見せている。

このように売上高経費率が年々上昇し、出口の見えない状況が続いているが、運賃高騰は市場の原理で不可避としても、対処療法のほかに打つ手はないのだろうか。

思いつくまま以下に列挙してみる。

  1. 生産・在庫拠点の立地
  2. 料金・運賃の交渉1.生産・在庫拠点の立地
  3. 輸送の効率性
  4. 小口輸送の選択肢

1.生産・在庫拠点の立地

 上述のような局面にこそ自社の拠点と出荷先、港湾(内航・外航)や空港、鉄道ターミナルとの距離が影響する。その距離を埋めるのは陸送だが距離が長いほど運転手の拘束時間と燃料費が余計にかかる。近距離なら回転率が上がり運転手1人あたりの輸送量が増え固定費は下がる。

とは言え既存の自社の立地を変えるのは投資を伴い容易でない。ただ自社の生産・在庫にかかわる固定費(ないしは投資額)と外部委託費(変動費)の損益計算によって外部委託に優位性が見出せれば物流費の圧縮と同時に立地を選択して変えられるのではないか。

ただその立地は出荷先や輸送手段により最適地が変わり、料金や運賃の市場調査、複社との交渉は欠かせない。何よりもまず自社の経営環境や事業の継続性、生産・在庫の見通しをもって総合的に判断するのであろう。

2.料金・運賃の交渉

 物流も他のサービスと同じく一般に、従量制、定額制、定額従量制に分かれる。

生産や加工、荷役作業、小口輸送は従量制ないしは定額従量制。大口輸送は定額制で、車両毎(陸送)、コンテナ毎(海上、航空、鉄道)。

いずれも差こそあれ原価計算に基づいているとして、その利益率を下げる交渉の他には、委託先の作業や輸送を省力化し固定費を圧縮出来る材料が必要だと考える。

それが委託元の事業の継続性、生産・在庫の見通しであり、さらに集約と効率化ではないかと思う。輸送貨物を集約して低頻度大量、委託作業の内容や対象物を標準化し効率化(工数削減)。決して丸投げにせず、情けは人の為ならず(自分の為)というような対応が必要なのだと思う。

3.輸送の効率性

 運転手やコンテナの不足が深刻化し脱炭素社会の実現を目指し待った無しの今こそ、輸送効率や積載効率の高度化のため積載空間の有効活用の最大化が急務だと考える。

そのためには貨物や梱包の小型化やユニット化(梱包や輸送容器寸法の標準化・規格化)が欠かせない。モジュールに差のある車両やコンテナにも高効率な寸法を導き出すこと。

それが高効率な物流網、フィジカルインターネットの構築を下支えすると考えている。

4.小口輸送の選択肢

 小口と一口にいっても封筒や袋から、大小様々な段ボール箱、一箱から数十箱、一パレットから数パレットと様々。と同時に様々な輸送手段の選択肢があり、それぞれの運賃を比較した損益分岐点があり、運賃以外の要素もある。

手段は、コンテナのサイズ、コンテナ貸し切りかばら貨物。また契約先は運行会社、混載事業者、国際宅配便業者。

手段それぞれ、海上輸送と航空輸送、それぞれの契約先を加えて損益分岐点(どれが安いか)がある。国際宅配便はドアからドアの輸送に加え通関費も込みの運賃と時間の利益を考慮する。

一般に航空輸送の運賃計算は実重量か容積重量か大きい方で課金する。海上輸送は容積基準。つまり貨物が小型軽量なほど容積重量を回避でき航空輸送が割安になる。

 その他の要素は、納期や消費地の需要、商品や部品の価格や希少性などの付加価値性。これらを総合して経済効率の観点で選択するべきだろう。

ここまで思いつくまま列挙してみたが、これらにいち早く着手し実行していく体制を構築していくことが、将来への重要なファクターとなっていくものと考える次第である。

 東葛経営活性化協会 コラボレーター 板谷一志