東葛経営活性化協会コラム 第1回
この度、東営活性化協会のホームページを開始するにあたりコラムを執筆しませんか?との誘いを受けた。
長年同じ企業で全社的プロジェクトを共同主導し、多くの世間話をはじめ、経営に関しても雑談をする仲である代表の西村氏からである。多少躊躇したものの、企業人としての約40年間を顧みる良い機会であると思い執筆を受けることとした。製造業一筋に従事してきた経験と長年の海外体験を通した雑談等にお付き合い願えれば幸いである。
今回は手始めに強烈な印象を与えられたある企業についてお話ししたい。
今から20年ほど前の話だが、新規社内ベンチャー事業のカギとなる原材料調達先として新興インド企業との付き合いが始まった。この原材料は大手北米企業の独占化学品だったが、調達しようとした矢先に事業再編により他製品を含めて事業毎身売りされ、このインド企業がM&A先として世界唯一の製造販売元になった為である。30代の若いエグゼクティブ達との交渉は非常にスピード感があり、北米での最初の会議から日本での契約締結会議、インド工場視察等まであっという間であった。彼らは当初から今はなきブラックベリーやノートPC等のモバイルギアを駆使して世界中を飛び回っており、多忙な中での会議は次の動きを決める重要な場として明確に定義していた。
自社事業のCoreは優れたR&D,製造技術・プロセスを通した有機化学コンビナート用添加剤製品群だが、顧客使用先の環境や条件を診断して最適な組み合わせの製品群を提案する総合ソリューションビジネスであり、単なる化学品メーカーではない。また、世界の巨大企業が事業再編でスピンアウトさせた複数のスペシャリティケミカル事業を、M&Aでこれまで傘下に入れてきている。 該当市場は、付き合いが始まった当初から、発展途上の自国のみならず海外諸国にビジネス基盤を作り、世界を視野に入れていた。
翻って2022年、コロナ禍での日本の状況を鑑みると、企業のリモートワーク・オンライン等のDX推進の必要性が叫ばれ、大手の不採算事業や企業の廃業・撤退によるM&Aの機会増大とその流行、周辺事業への転換、海外と国内の市場バランスによるリスクヘッジ等が中小企業の事業再構築のカギとなっている。紹介したインド企業は、外部要因のコロナに関わらず、20年前から事業拡大の視野がブレることなく、これらを積極的に実践してきている。
そのスピード感のある先見性とビジネスポリシーは一考に値すると思うが、いかがだろうか?
東葛経営活性化協会 顧問 安田 智