東葛経営活性化協会コラム 第3回

「長期化するコロナ影響に直面する中小零細企業の現状と今後の課題」 前編

中小零細企業の現状

R2年2月より流行が始まったコロナウイルス感染症の影響が収まらない。

 R4年3月現在においてオミクロン変異株の影響で国内では過去最大数のコロナ感染者が発生しており、コロナ第六波を迎えてもまだ収束のめどが立たず日本経済の先行きは不安定と言わざるを得ない状況である。巷ではコロナ禍で高校に入学した高校生が、入学式も体育祭も部活動も修学旅行も中止の中で高校3年生を迎えて、このままコロナ影響が長期化すれば卒業式すらも経験できないのではと危惧される未曽有の状況である。ここまで感染症の影響が長期化して深刻になるとは2年前のコロナ流行当初には考えもつかなかった。

 実際の中小企業経営においては深刻な状況が続いている。筆者は某政府系金融機関において「コロナウイルス感染症特別貸付」と名する緊急融資の審査業務に携わっている。このコロナ禍の2年間に政府系金融機関には平時の8倍にものぼる程の融資相談が寄せられている。当然、通常の体制では対応しきれるものではなく、土日出勤や夜間残業、手続きの簡略化などにより膨大な数の審査件数をこなしてきた。

 現場の支店ではコロナで売上が上がらなくなり、人件費や家賃の支払いが困難になるなど資金繰りに窮した経営者からの相談の電話がひっきりなしにかかり、赤字補填の資金が底をついて廃業を余儀なくされた経営者の悲痛な声を多く見聞きしてきた。地域の飲食店や小売店など、対面営業を主体としてきた企業にとって、感染症の影響で人の流れが断絶されることは死活問題につながる。「人が来店できない」中小零細企業にとってこのような経済環境に置かれた状況は過去になく、零細企業の経営者の多くは未曽有の事態になすすべもなく途方にくれていたというのが現状だった。

 それでもコロナ緊急融資の支援により、一時的とはいえど多くの中小零細企業は営業を継続することができたし一時支援金や持続化給付金などの補助金政策も中小零細企業の資金繰りの命綱として効果を発揮していた。実際に某政府系金融機関の取引先数はコロナ以前80万社弱であったものがコロナ禍において117万社にまで膨れ上がりコロナ特別融資額も9兆531億円とリーマンショックや東日本大震災発生時の緊急融資額の約3倍もの金額を融資した実績があがっている。現場ではコロナ融資実行後に中小企業の経営者より感謝の言葉をいただくことが多く、コロナ禍の中小企業を救済したというある意味達成感のようなものが醸成されていた。融資によって中小企業の倒産を防ぎ、中小企業で働く人たちの生活を守ることができたと考えていた。

 ところが、コロナは収束しない。コロナの影響で一時的に売上がなくなったとしてもコロナ融資で運転資金を確保すれば当面は会社が潰れてしまうことはない。しかしながら、ここまでコロナの影響が長期化するなど誰が予想しただろうか。現実には6カ月ほどでコロナ融資で調達した資金を赤字補填として使い切ってしまい、再度の融資相談に来店する経営者が後を絶たない。コロナが発生してから2年経過する中で短期的な借り入れを繰り返して財務状況が悪化している企業があふれている。もはや債務超過となり抜本的な経営改善策を打ち出さなければ再建は困難な状況である。「水中で息を止めている状態」コロナ禍で売上が上がらず赤字状態が続いている企業がよく経済誌でそのような例え方をされている。コロナが流行して2年間、持続化給付金やコロナ融資が酸素ボンベだとしても長期に渡り政府に酸素ボンベを供給し続ける財政的余裕はもはやないだろう。変異株の出現でコロナが収束する見通しがついていない以上、当面はコロナ禍という「水中」で何とか生き残らないといけないのが中小零細企業の現状である。

東葛経営活性化協会 会員