東葛経営活性化協会コラム 第22回
「クラウドファンディングの仕組みと効果」
はじめに、筆者は金融機関でクラウドファンディングのファンド組成の業務に就いている。ここ数年で世間的に認知度が高まっているクラウドファンディングだが、病院の設備投資にわずか数日間で億単位の資金が集まったり、個人が創作したアイデア商品が瞬く間にヒット商品として世に出回るなどのニュースが話題になり世の中的に「クラウドファンデイング」という用語は市民権を得たように思う。実際のところ思うように資金が集まらず頓挫してしまうプロジェクトも数多く存在するのだが、うまく人々の「共感」が得られればインターネットを通じて不特定多数の人から短期間で資金が集められるところが魅力になっている。今回のコラムではそのようなクラウドファンディングという資金調達手法についてその仕組みと効果を簡潔に紹介できればと思う。
まず、クラウドファンディングの基本的な仕組みだが資金調達を必要とする「事業者」とクラウドファンデイングのプラットホームを提供する「仲介業者」と資金を提供する「投資家」の三者間の契約により成立する。資金調達をしたい「事業者」は「仲介業者」(有名なところでMAKUAKEやCAMPFIREなどの業者)へ事業計画を提出する。「仲介業者」においてはキュレーターと呼ばれる相談担当者が「事業者」の事業計画を審査し、いかに投資家へ商品をPRして資金を提供してもらうかを「事業者」と相談し綿密な計画を練る。
次に「仲介業者」が自社のプラットホームに「事業者」の事業計画を掲載し「投資家」から資金提供を募集する。この際にいかに投資家にとって魅力的な商品であるかを伝え、事業計画に実行性があることをサイト上でPRしていくことが重要になり、事業計画によっては投資家の支持を得るためにプロジェクト成功時の顧客への返礼品まで検討している。要は投資家が投資に見合うリターンを得られるかをいかに効率的に伝えられるかで資金調達がうまくいくかどうかが左右されるため事業計画を投資家にとって分かりやすくメリットのあるものとしていかに作成するかが重要である。筆者が担当した顧客では映画作品を提供する事業計画においてプロジェクト成功の返礼品として「主演女優・監督」との面会権や直筆サインを提供したり、地方の野菜農家が農場設備の購入にクラウドファンデイングを活用して資金調達を実行し、返礼品として有機野菜の詰め合わせが一定期間無料で定期配達されるなどユニークなものもあった。
クラウドファンデイングにはいくつかのタイプが存在し著名なものとしては「購入型」「寄付型」などが多く、「融資型」や「投資型」などの金銭でリターンを得られるものも最近は増えてきている。「購入型」は新商品の予約販売にあたり、投資家が金銭を投資したリターンとして商品を得るタイプ、「寄付型」は慈善団体などがよく利用するプロジェクトで発展途上国に病院を建てるなど社会貢献性に共感した投資家がリターンを求めず投資するタイプである。企業のイメージアップのために社会貢献性の高いプロジェクトを本業の事業とは別にクラウドファンデイングとして打ち出して会社の認知度を高める企業も増えている。また、商品ではなく利息として金銭でリターンを得られる「融資型」「投資型」などのクラウドファンデイングもプラットホームが整備されてきている。特定の商品を持たない小売業以外の業種においても今後クラウドファンデイングの活用が増加していくだろう。
小売業者などは商品を直接販売できて売上につながる「購入型」がメリットがあるだろうが目に見える商品を持たないサービス業などの業種は「融資型」「投資型」を活用していることが多い。小売業者などは商品を「モノ」としてクラウドファンデイングで販売するが目に見える商品を持たない企業は取組を「コト」として販売している。「映画を作ること」「発展途上国に病院を作ること」など取組を事業計画としてPRして投資家の共感を得て資金を集めている。
| 類型 | 効果 |
|---|---|
| 購入型 | 新商品の販売などを販売するためのクラウドファンデイング 投資家はリターンとして商品が得られる |
| 融資型 | 事業プロジェクトなどをPRして資金調達 投資家はリターンとして金利収入が得られる |
| 投資型 | 事業プロジェクトなどをPRして資金調達 投資家はリターンとして分配金収入が得られる |
| 寄付型 | 慈善団体の社会貢献活動などのをPRして資金調達 投資家へのリターンはなし |
いずれのクラウドファンデイングのタイプも業種や取扱商品・サービスの違いはあれど投資家の共感を得られるような魅力的な事業計画として打ち出すことで資金調達を図っている。クラウドファンデイングが生まれたことで企業の資金調達の手法が多様化しこれまでは上場企業でしか実施できなかった株式投資による資金調達に近しい手法で一般の個人から資金を調達することが可能になった。事業実績の乏しいスタートアップ企業などにとっては銀行融資を受けることが容易でないためクラウドファンデイングの活用は資金調達の手法として有効ではないかと思われる。クラウドファンデイングは「事業者」にとって資金調達と顧客関係性強化、広告宣伝効果が同時に見込める有効な手段である。
「仲介業者」は資金調達額の金額に応じて一定割合を手数料として得ているがその割合は5%から20%程度である。「仲介業者」はプラットホームの運営を行っているが「事業者」のプロジェクトが失敗したとしても直接のデメリットは発生しない。ただし、失敗するプロジェクトが多いプラットホームはプラットホームとしての信用を失墜し投資家から敬遠されてしまう恐れはあるためやはり事業計画の審査を綿密にすることは重要だと感じる。
クラウドファンデイングの効果としては新規商品が予約されることで確実な売上につながることの他に広告宣伝による潜在顧客層開拓の効果が大きい。筆者の担当するクラウドファンデイングプラットホームにおいてはそのWebサイトへのアクセスがおおよそ月に10,000件ある。これは自社の事業計画や商品などが10,000回顧客の目に触れる機会があることを示唆している。クラウドファンデイングの事業計画期間は6か月~3年ほどであるがそのファンド運営期間中は投資家から注目されて売上の進捗状況などが常にWebサイトにアップされており投資家との間に継続的な関係性が生まれる。事業計画がうまく進捗してファンドの計画目標を達成することで、投資家はリターンを得られて満足度が高まり、顧客関係性が強化されてファンド期間終了後も「事業者」のファンとして既存顧客になることが見込まれる。Webサイトは「投資家」以外の人からも見られるようになっているため潜在顧客の目に触れることで新規顧客開拓の機会にもつながっている。このようにクラウドファンデイングは「事業者」にとって資金調達と顧客関係性強化、広告宣伝強化がメリットとしてあることが特徴である。
有効な資金調達手法であるクラウドファンデイングであるがデメリットも存在する。プロジェクトが失敗してしまった場合に投資家の信用を失い既存顧客が離れてしまう他、プラットフォームのWebサイトにも事業計画の未達情報が掲載されてしまうことで広告宣伝効果が逆効果となってしまうパターンである。これは「事業者」にとって結構な頻度で発生している。クラウドファンデイングをスタートした後に当初の計画通りに事業計画が進まずWebサイトに芳しくない売上の達成状況が継続して掲載されてしまったことで顧客が離れ最終的には裁判所を通じた破産に至ってしまったケースもある。プラットホームにもよるが事業計画について達成率〇〇%とはっきりと明示されるWebサイトは多く、100%を超えて達成した事業計画にとっては顧客へのプラスの広告宣伝効果になるが、例えば30%といった芳しくない達成率は即顧客離れへとつながる。クラウドファンデイングでは目標達成率がはっきりとプラットホームに掲示されることが広告宣伝効果としてプラスにもマイナスにも大きく働いてしまうのである。事業計画の作成は実行可能性を詳細に検討してから綿密に行うべきと言えよう。
昨今巷で市民権を得た「クラウドファンデイング」について簡潔に仕組みをまとめてみた。銀行融資などより資金調達のハードルは低く顧客関係性強化・広告宣伝効果が見込めるので、今後も「事業者」にとっては身近な資金調達手法になり得ると思う。「投資家」にとって魅力的な事業計画を打ち出すことは資金調達するうえで重要だが計画未達の際には自社のイメージダウンに直結してしまうため事業計画の作成を綿密に行ってほしい。
実 際に中小企業の「事業者」がクラウドファンデイングを活用する際に、一番最初に検討しないといけないことは自社のどんな「モノ」「コト」をクラウドファンデイングでPRするかを入念に計画することだ。新商品のPRやSDGs社会貢献の取り組みなど、昨今担当させていただいたクラウドファンデイング案件ではまず「事業者」の強みを分析して会社としてPRすべきものが何なのかを十分に検討した。これはクラウドファンデイングの企画に限ったことではないが、これまでの経営を振り返って改めて自社分析を行い、自社の強みとなる部分をいかにPRしていくかを再度議論していただくことをお勧めしたい。その際には顧問の税理士や中小企業診断士などの専門家も交えて自社の経営を顧みる機会をもつことが第一歩になるかと思う。
最後にまとめになるが、クラウドファンデイングは大衆へのPRにもつながる有効な新しい資金調達手法であるが事業計画が多くの人々の目に触れる反面、計画が失敗した時の企業に対するマイナスイメージは大きい。まずは身近な専門家に自社の事業計画作成の相談をするところから始めてみてはどうだろうか。
東葛経営活性化協会 会員


