東葛経営活性化協会コラム 第21回

 最近話題になっている生成AIだが、思っているほど、業務に利用している企業は少ないように思える。帝国データバンク調査では、業務で活用、検討している企業が61.1%といかにも多くの企業導入しているように発表されているが、実際に活用している企業は9.1%である。何故あたかも多くの企業が活用しているような方向で発表するのであろうか。私は、違和感を覚えた。

 実際当社も含め、取引先の大企業でも、生成AIの業務利用ついては、禁止若しくは、かなり警戒し従業員に制限をしている。実際に活用を促進している企業紹介を見ても大企業で、情報漏えい対策が施され自社用開発されたものや、有料版で特別仕様であることが多い。製造業などAIの利用が増加しているが、無料の生成AIではなく生産設備の為の独自のAIであろう。理由は各企業の事情にもよるが、現在検討中の多くの企業では、実施に業務効率化に貢献出来て無料であれば、活用したいと考えるのは当然である。

 先日、ある企業の生成AI利用にあたってのガイドラインを策定のお手伝いをした。ポイントは、入力する情報の制限と出力された情報の利用制限である。その企業ではプライバシーマークも取得をしいたので、入力する情報の制限のための情報資産の棚卸しも良い状態であったので、すんなり決定した。自社にどのような管理すべき情報があるのか分かっていない場合、その分析から実施する必要がある。情報資産の棚卸しには(独)情報処理推進機構(IPA)が公開している中小企業の情 また、規則として定めたからと言って、生成AIは多数あり、その全て対して監視することもできない。そちらの企業では、既に導入しているWebフィルタリング機能を活用して許可していない生成AIにアクセス出来ないようにした。完全ではないものの、リスクを減らす事に注力した。もう一方の出力された情報の制限では、主に顧客に提案するような資料については利用しないように注意を促し、何故なのかを従業員全員に教育した。ご存知のように、生成AIは間違いもするし、出力されたものが画像やロゴの様なものであれば著作権の問題も発生する。以前、試しに外国人労働者の雇用状況を問い合わせしたら、日本人労働者の雇用状況を出力してきた、この内容は本当に外国人労働者の雇用状況か再確認しても、そうだと返してきた。知らない人がそのまま利用したら大問題である。生成AIを活用するには出力された情報の裏取りは必須である。従業員には「当社としてのリスク」として認識するように教育を実施した。

 話は変わるが、生成AIの利用が進まない企業の問題点は、具体的なイメージ湧かない企業が多いようだ。そもそも、今までのインターネット検索程度しか利用方法が考えられないようでは、将来に向かって業務に活かせるはずがなく、チャンスにも繋がらない。今後伸びて行く企業はこう言った最先端の技術にも前向きに取り組む従業員がいる企業が生き残って行くのだと思う。大切なのは柔軟にAIを活用できる人材である。中小企業では、高度な技術を持った人材を採用しにくいなど難しい一面もある。時間と費用がかかるので直ぐにとは行かないが、今居る人材を育てる事によって獲得する方法もある。費用面のサポートとして手続きは簡単では無いが、人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」が高度デジタル人材や定額制の訓練に助成しているので検討して見てはいかがだろうか。

 AIの進化は目まぐるしく、日々成長している。海外では、デザイナーやホワイトカラーの仕事などAIに仕事を奪われたなどの記事を目にする一方で、AIを活用して起業をした話も目にする。AIを事業に活用できるか、生産性を向上できるか、の競争が激化している業種も多くなってきている。将来、ホワイトカラーの仕事はAIに取って変わる日もそう遠くないと思う。今のAIでは情報の収集と分析・結果の出力程度であるが、将来、企画や提案の仕事もAIで賄える時代は近いであろう。AIが物理的に実行可能な体を持つ時代には、さらに代替えされる仕事も増え、AI自身が働き納税することもあるのではないだろうか。まさに、一人に1人(台)?のAIの時代が来るのではないだろうか。目の前だけを見ずに広い視野で、少し先の未来を考えて、今何が必要かを考えてみるのも良いトレーニングになるかと思う。

東葛経営活性化協会 会員