東葛経営活性化協会コラム 第5回

 前回はインド企業のスピード感のある先見性とビジネスポリシーについてコラムの題材としたが、今回は米国のコロナ禍における支援補助金等の対応を紹介したい。特にこの分野の専門家ではないので抜けもあると思うが、米国永住権保持者として一般的な納税者の目線で述べてみたい。日本と比較して中小企業活性化の一助となれば幸いである。

コロナ禍支援補助金は、1)連邦政府、2)州、3)市等の地方自治体 の行政枠で成り立つ。

 ざっくりリストにするが、まず個人米国納税者についての前提を以下に述べる。 “米国では一定額以上の所得(米国外収入も含む)を得た、米国籍と永住権保持者、就労ビザを有する全ての者は確定申告義務があり、自営業はもちろん、いわゆる給与源泉徴収を受けたサラリーマン(日本人赴任者も該当)もそれ以外の所得(金利、配当、年金、慰謝料、アルバイトやチップ収入等、あらゆる所得)を含めて年間所得を申告する。但し日本より多項目で経費や控除が認められているので還付申告のケースも多く、TAX RETURNと呼ばれる。米国は背番号制で各人が社会保障番号(SSN)を発給されておりIDとして広く使われる。(昨今は移民政策で取得が非常に難しい。日本のマイナンバーに該当)“

1)連邦政府

*個人納税者:

1.2020年3月:社会保障番号(SSN)ベース: 一律$1000支給

2.2021年:経済活性化補助金(EIP-1.2):2020年度の確定申告者に$1200+$600を支給

3.2022年:復興還付補助金(RRC): 2021年度の確定申告者に$1400を支給

*中小企業:中小企業庁の多岐にわたる補助金・低金利ローン政策

(給与補償、返済減額・免除、損害補助金・ローン、業種限定活性化基金、閉鎖店舗補助金等)

2)州

*個人(社会保障番号:SSN):影響をうけた内容により雇用保険申請ベースで補助金支給

但し支給額は連邦政府の確定申告(上述)に記載必要で課税対象

*中小企業(各ビジネス登録番号):州の中小企業救済基金

3)市等の地方自治体

*中小企業救済基金:制約が多いが、影響をうけた実際の内容ベースで実害の払い戻し補填支給

 米国のコロナ禍対応は、各個人と中小企業に対する支援・補助金の支給という枠組みは日本と同様であるが、ワクチン政策を含めて救済・復興補助を実行するスピードがより速く、予算枠も相対的に大きい。必要に応じて議会で法案を早急に立案・協議・採択後に大統領が署名し、施行に当たっては番号制度を有効活用してデジタル化されたオンライン申請システムによる直接入金やアナログの小切手発行を併用し、とても実利的である。あくまで個人的な感想だが、スピード施行には100%を求めず、できる範囲でスピードを優先させながら実行し、不具合には、完全ではないが、状況に応じて柔軟対応しているように思う。これは米国、インド企業のスピード感覚と共通していると同時に、国土が広く多様性がデフォルトである民主主義大国のダイナミズムを痛感させられる。

一方で、コロナ禍を通して改めて感じた日本と米国の相違点をいくつか述べてみたい。

■国民性:多人種国家であり、経営者・被雇用者含めて独立心旺盛で自発的・能動的な人が多い。

■教育:自由度が高く、デジタル・AI等を活用して社会を向上させる発想・意欲がある。

■雇用形態:もともと多様性があり、流動性が高い。

■雇用保険:一時的解雇であっても支給され、失業中に再雇用・他への求職・独立起業を熟慮。

■経営者リスク:債務に関して個人保証を要求されず投資家リスクへ転換される場合が多い。

■資金調達:“新規”中小企業投資には政府の減税政策が手厚い為、投資家の出資を呼びやすい。

■LLCとしての起業:企業利益のみ課税、利益配分では個人株主は非課税。出資を呼びやすい。

■中小企業庁:中小企業への投資基金リストをオンライン提供し、そこに個人投資家と共に出資。

米国の政策は、もともと“意欲的な成長性の高い新興中小企業を継続的に創出しやすいシステム”になっていると思う。従って悲観的になりがちなコロナ禍を発展的にチャンスに転換する国民の“草の根の強さと明るさ“を感じる。 日本の中小企業活性化のヒントがかなりあると思うが、いかがだろうか?

東葛経営活性化協会 顧問 安田 智